ユリイカ【荒木経惟】
今日の1冊は、ユリイカ【荒木経惟】青土社です。私は写真をちょっと、ほんのちょっと齧ったのでアラーキー・荒木経惟さんのことは知っていますが、恥かしながら名前が何と読むのか知りませんでした。Nobuyoshiと読むんですね。何年か前に奥さんが書かれた、荒木陽子【愛情生活】を読み、なんて良い夫婦なんだろうと思いました。隠し事がないありのままなんです。奥さんが亡くなれたことは知っていましたので、この本を読むと目頭が熱くなっていました。立花隆さんは、【ぼくはこんな本を読んできた】という本の中で「天才アラーキーこと荒木経惟は、私と同じ高校の同窓生である。日常さほど親しくしているわけではないが、いつも遠くからその仕事は見守ってきた。特に「噂の真相」に彼が連載している写真日記は欠かさず見ている。いつもは面白半分に目を走らせるだけなのだが、三年前、夫人の陽子さんが亡くなる前後を記録した写真日記にはまいった。見ているうちに読んでいるうちに涙がとめどもなく出てきておさえられなくなった。その写真は後に写真集『センチメンタルな旅、冬の旅』(新潮社 二七〇〇円)におさめられた。あれ以来荒木を当代随一の写真家と評価するようになった。そして、荒木をこれほどまでに惚れさせた陽子さんが生きているうちに一度でも会っておきたかったと思った。
荒木陽子+経惟『東京日和』(筑摩書房 二八〇〇円)は、陽子さんが書き遺した文章に、荒木が沢山の写真と日記をそえてできた本だ。陽子さんの想い出が写真に文章にギッシリ詰まっている。こんなに深く愛せる女と出会えた荒木をうらやましく想った。」と書かれています。
ユリイカ【荒木経惟】に荒川洋治さんがこんなことを寄せています。「略 その写真はシュールで刺激的だ。特別なパワーを感じるけれど、それは荒木氏もまた自分のそば、自分の写真のそばにいることが、楽しいのかもしれない。自分のそばにいて楽しいという気持ちを正直に伝えることは、荒木氏のような繊細な人にはきはずかしいことだろう。だから思いつくだけの、ありたっけの奇矯な視線や手法を編み出す必要があるのかもしれない。そこでは彼はすなおになる。はだかの人が背を向けて服を手操るように、人らしくなる。天才とはそんなとき、いちばんうしろに回ることができる人なのだと思う。」
ユリイカ1996年1月臨時増刊号 総特集=荒木経惟 写真戯作者の55年
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購入本
《N・O》
中上健次 【火まつり】文藝春秋
西口克己 【西口克己小説集3 廓(上)】新日本出版社
西口克己 【西口克己小説集3 廓(下)】新日本出版社
《Og》
津島佑子 【逢魔物語】講談社文芸文庫
野口富士男 【私のなかの東京 わが文学散策】岩波現代文庫
清水義範 【「青春小説」】中公文庫
ユリイカ 【荒木経惟】青土社
《O・S》
篠田浩一郎 【形象と文明 書くことの歴史】白水社
岡俊雄 【世界の色彩映画】白水社
筈見恒夫 【女優変遷史】三笠書房
東陽一 【午後4時の映画の本】幻燈社
安岡章太郎 【映画の感情教育】講談社