田中小実昌、寺山修司、植草甚一が

 原田宗典編【日本の名随筆 買物】作品社、目次に田中小実昌…パチンコ台を買った/寺山修司…ペルシアの市場にて 雑貨のフォークロア植草甚一ダウンタウンで安物を買って歩く/となっていて三人が並んでいる。
田中小実昌【パチンコ台を買った】は、男がパチンコ台を背中にしょって、上野講演で商売をしている小説を書こうと思っていて、吉原を歩いているとパチンコの修理屋があって、そこでパチンコ台を買う話だ。こんな小説を思いつくのが愉快な感じだ。短い話ばかりだから、もうちょっと眺めていると、上林暁という文字が目に付いたので読んでみる。作家名がカンバヤシアカツキだということをつい最近知ったばかりだ。人の名前の読み方は難しい、作家名となれば尚更だ。上林暁【買物ぎらひ】、[大体、私は買物が嫌ひである。だから、買物らしい買物は滅多にしない。買物のことを考へると、おくくふでならない。面倒臭さを通り越して、心の重荷である。 買物の手順を考へてみるのに、先づ店へ入って行かねばならない。そのとき、店員の顔色や店の雰囲気が気になっていけない。 品定めに当つては、迷はねばならない。品定めには決断を必要とするが、私はそれを欠いていいる。だからと言って、あんまりいぢり廻したり吟味したりするのも、厚かましく思はれさうで、出来ない。迷ひと心づかひの間で、自己嫌悪に陥ることもある。]と書いてあって、あれれ私とそっくりだと思ってしまった。この年になって、どうにか初めての店でも入れるようになったが、苦手である。上林暁を調べて、びっくりしたのは、上林と言う名前を熊本の五高時代の下宿した住所の名前だというのだ。熊本市上林町、熊本城の近くだ、私は出身が熊本市に隣接する隣町だが、カンバヤシと聞けばなんとなくわかるが上林だとわからない。上林暁という人が急に親近感を帯びてきたのだ。
 


  購入本
  《Og》
   室橋哲郎    【実録日本汚職史】ちくま文庫
   村上春樹    【羊男のクリスマス】講談社文庫
   村上春樹    【ねじまき鳥クロニクル第3部】新潮文庫
   黒岩重吾    【北風に起つ】中公文庫
   原田宗典編   【日本の名随筆 買物】作品社
   南條範夫    【無惨や二郎信康】旺文社文庫


  《S・H》
   深沢七郎    【極楽まくらおとし図】集英社
   各務虎雄    【俳文学雑記】積文館
   森茉莉     【記憶の絵】ちくま文庫