【雪沼とその周辺】

雪沼とその周辺

雪沼とその周辺

2005年6月30日 読書日記より

 125 ★★★★☆
 【雪沼とその周辺】 堀江敏幸 著  新潮社
 谷崎潤一郎賞受賞 川端康成文学賞受賞 木山捷平文学賞受賞

《堀江作品を初めて読む》

 良い読書に適した本にも2種類ある。一つは、ぐいぐいと先を読ませるものと、もう一つは、ゆったりとした気分で読ませるものとが。もちろん、この本は、あとの方でページを繰るのが大袈裟であるがもったいないほどに感じるのだ。穏やかで静かな文章であるのに確実に、主人公の人生が描かれているのだ。
 評判が良いので、一度読んでみたかった作家である。
 評判にたぐわないくらいに良かった。
 こんな文章を書く作家もいたのか、と感心させられた。
 雪沼の地域に暮らす人々が、真面目でまっとうな生活・人生が<下線>さらり、さらりとしてしっかりと書かれている。七つの章のどれをとってもゆったりとしたなかにも、主人公たちが歩んできた確かな人生が浮かんでくるようでもあるのだ。何か、日常がこんなに温かみがあり、ちょっと豊かな気持ちにさせられる作品だ。
 デッキチェアの椅子に揺られながら、ゆったりとした気分で読みたい作品である。



 購入本
  《Og》
   大江健三郎    【万延元年のフットボール講談社文芸文庫
   堀江敏幸     【雪沼とその周辺】新潮社



  《O・S》
   平野赳      【食の世界】公文堂
   長谷川龍生    【立眠】思潮社
   松永伍一     【ムッソリーニの脳】アディン書房
   菅谷規矩雄    【飢えと美と】イザラ書房
   湯川秀樹     【旅人】講談社