佐藤泰志に見る人生

夕方から、西荻ブックマーク主催の「そこのみにて光り輝く 〜佐藤泰志の小説世界〜」を聞きに会場の今野スタジオ『MARE(マーレ)』に行く。開始時間ぎりぎりに来てしまって、会場にいると満員の人だった。私は、昨年西荻ブックマークに初めて参加して聞いたのが佐藤泰志の作品【海炭市叙景】の朗読だった。佐藤泰志という人には不思議な因縁を感じる。この会に出て大げさに言えば人生が変わってきたのだ。古本という道に迷い込んでしまった。そして、今年ようやく因縁の本【海炭市叙景】を荻窪<ブ>で見つけたときは身震いを感じたものだ。今日も【海炭市叙景】の朗読で始り、文弘樹 (図書出版クレイン)さんの佐藤泰志の本を出すまでの話、岡崎武志さんの佐藤泰志への思いを語り、2部では、娘さんが率直に父親を語り、まじかで接した友人の人たちが、佐藤泰志像を語ってくれた。そして、最期は【虹】の朗読で、会が終った。長年、読書は何なるのか、というのを求めてきたが、今日、この会に出て、それ以前の『文学とは何か』という難題があるが、その回答を教えてもらったという気がした。それは、『作家の内なるこころの言葉の表現・内なる魂の叫び』だということだ。小説、幻想や悪ばかりでなく、その人から発せられる『作家の内なるこころの言葉の表現・内なる魂の叫び』ではないだろうか。受け取る読者も真剣勝負になってくる、それが読書の醍醐味だろうか。最近の本では、どうもそれが欠けているように思う。『文学は人生そのもの』、人生には悲しみもあり、苦しみもあり、勿論楽しみだってある。それを読んで読者が共感したり、現実を見極めたり、精神を高揚させたりする。読書だけで幸福感は得られないが、何かの糧にはなるはずだ。それを作り出す作家の責任も重たいのか知れない。佐藤泰志の作品は、そのものが人生だったのだろうか。




 購入本
  《O・S》
   櫻井増雄      【處女】前線社
   山縣三千雄     【日本人と思想】創文社
   大町文衛      【蟲・人・自然】甲鳥書林
   高田保       【風話】和敬書店
   高田保       【人情馬鹿】創元社