池澤夏樹【読書癖2】を読む
池澤夏樹【読書癖2】を読む。82篇の書評が載っているが、その紹介されている本の5%も読んでいるのか。
一篇の小説を読む時、人の頭の中ではどういう現象が起こっているか。それを考えている。われわれはいかなる快楽を期待して小説に手を伸ばすのか――架空のものとして提出された一連の事件の連鎖を追うこと・しばらくの間だけ自分ではない人間になって別の運命を辿ってみること・作者と呼ばれる人の思想を認識してゆくこと。抽象的にはそういう説明ができるだろう。しかし読者は決して小説の内容を流し込むからっぽの器ではない。彼は人格をそなえ、性癖や偏見に飾られた能動的な存在である。読みというものは一人一人で異なる。読者は少なくとも作者と読者という二人の人間が関与する事象ではないか。(ある章の始まりのことば)
上の文章は、池澤夏樹【読書癖2】のある章の出だしの文章である。この文を読むともっともなことである。でも、この先から、しかしで始まるので、これを否定している本もあるという意味の書評を書いてある。あぁ、それは池澤夏樹のすごいところだろうか。私が書きたかったのは、仕事のことが気になったり、入院している家族のことが頭のどこかにあったりすると、読書も全然読んでいるのではなく、文字つらを眺めているのに過ぎない。これは、読書でけでなく食事の味覚にも現れたりする。毎回、食べていて美味しいと感じたのが、薄い味とか濃い味とかでなく、アルミ味・金属的な味がする。こんな現象が起きること自体が、精神的におかしいのだろうか。この一か月そんな時期だった…。
購入本
《O・S》
山崎豊子 【ぼんち 上巻】新潮社
山崎豊子 【ぼんち 下巻】新潮社
亀井勝一郎 【中世の生死と宗教観】文藝春秋新社
大西巨人 【巨人雑筆】講談社
椎名麟三 【新作の証言】筑摩書房
奥野信太郎 【詠物女情】新潮社
《Og》
坂口安吾 【安吾 新日本風土記】河出文庫
宮脇俊三 【失われた鉄道を求めて】文春文庫
谷川俊太郎・大岡信【批評の生理】思潮社