香月泰男

 松屋銀座店の古本市は、銀座という場所柄か、それとも正月というのか、華やいでいた。上品なオバアサンが『本の値段は、どこに付いているんですか』、と聞かれていた。ちょっといつもと違う古書展の雰囲気だった。ある古書店の棚に香月泰男の本が上段に置いてあり、いかにもといった箱の感じだったが、下の段(安めの)にもあったので、取ってみた。箱が2重になっていておもちゃの絵のシリーズだった。香月泰男と言ったら「シベリア・シリーズ」の墨絵調の印象だが、この本の絵は明るいものだった。私の知り合いが香月泰男の息子さんと同じ会社にいて、食事を息子さんとお母さんと3人でしたときに、テーブル一杯に料理を頼んで、知人がどうしてこんなに注文するのかと息子さんに聞いたら、沢山あれば場が賑やかになるのが好きだからということだった。それが香月泰男のことを思ってかとのことだったようだ。この本を見ながら、昔、そんな話を聞いたことを思い出した。