真尾悦子

 購入本
  《Og》
   小林信彦    【背中あわせのハート・ブレイク】新潮文庫
   小林信彦    【イエスタデイ・ワンス・モアpart2】新潮文庫
   小林信彦    【悲しい色やねん新潮文庫
   小林信彦    【神野推理氏の華麗な冒険】新潮文庫
   小林信彦    【極東セレナーデ 上】新潮文庫
   小林信彦    【極東セレナーデ 下】新潮文庫




 真尾悦子【いくさ世を生きて 沖縄戦の女たち】を読む。

 「それッ、て、わたしも鍋をかかえて飛んで行きました。もう、おおぜいがぶつかり合って進めないくらい。やっと泉に着いた。小さい石囲いの中に、水が光ってました。いきなり鍋に汲んでゴクンゴクン飲んだ。おいしい、というより、ああ、生き返ったって気持。おなかが破れるほど飲みたかった。気がついたら、泉のふちに人が倒れていた。女の人。赤ちゃんをおぶっています。親も子も動かない。珍しく雨が上がっていて、物の形がはっきり見えるんです。死んでるかどうか、それは分からない。あんなたくさんの人が水を汲んでいったけど、誰も、倒れている人を振り向きもしない。わたしだって、アイヤー!て、チラと見ただけですからね」(本文より)

 戦争は、人間としての人格も狂わせる。敵も怖いが、その前にヤマトの軍も怖い。沖縄戦を生き残った女性が重い口を開き語っている。文章も、映画もちょっとズレがある、ここで何があったのか、その場にいた人しかわからない、と述べている。淡々と語られる中に戦争のもつ残酷さが、やりきれない思いだけが残る本だ。